「日本初」「No.1」「どこよりも安い」広告における最上級表現の落とし穴!景表法に基づき解説

商品やサービスの広告において「No.1」や「第1位」といった最上級の表現を見かけることがよくあります。これらの表現は他の商品やサービスよりも優れているという印象を消費者に与え、購買意欲を刺激する効果があります。しかし、これらの魅力的な表現が事実と異なる場合、消費者が誤解を招いたり損害を受けたりするリスクが高まります。そのため、景品表示法ではこのような最上級表現に対する一定の規制が設けられています。

この記事では最上級表現の使用に関する法的規制や適切な表現の条件を具体的に解説していきます。

最上級表現とは?

最上級表現とは、何かの指標において他のものより「最も優れている」という状態を示す言葉やフレーズを指します。例としては、「No.1」、「第1位」、「世界一」、「最高」、「最大」などの優位性や最上級であることを意味する用語が挙げられます。

最上級表現の種類

最上級表現の一例を種類別に分けて説明していきます。最上級表現は主に下記の3つに分類されます。

最大級表現

最大級表現とは、何かを他と比較して優れていることを示す、以下のような言葉やフレーズを指します。これには「最」を含む表現が多く使われます。

例:最高、最大、最小、最強、最も、至高、最高峰、首位、ダントツなど
使用例:「業界内でも最高峰のサービスが登場」

これらの表現は効果的に使えば強いインパクトを与えることができますが、実際にそのような地位や評価を反映しているかどうかについて明確な根拠が必要です。

比較表現

比較表現とは、他と比較して「一番」という状態を示す表現です。

例:日本一、世界初、唯一、No.1、第1位、ピカイチ、どこよりも安い
使用例:「顧客満足度No.1のサービス」

比較表現は、その使用にあたっては根拠を示す必要があります。これは、比較の対象や基準が明確でなければ誤解を招く可能性があるためです。ただし「富士山は日本一高い山です」といった一般に認知されている客観的事実に基づく場合は、特別な根拠の提示なしに使用できます。

絶対的表現

絶対的表現とは、他と比較しようのない確実性や完全性を主張する表現です。これは、何かが絶対に起こるまたは完璧であることを保証するような言葉やフレーズを用いることを指します。

例:絶対、必ず、100%、完璧、独占、これまでにない、当社だけ(のみ)
使用例:「業績アップを100パーセントお約束します」

このような表現は、提供されるサービスや商品が確実に期待される結果をもたらすことを保証しているように見えます。ただし、特にサービス業界においては、すべての結果を完全に保証することは現実的ではないため、絶対的表現の使用は一部法律で規制されている場合があります。このような表現を用いる際は、その使用が適切かつ法的な基準に則っているかを慎重に考慮する必要があります。

※全ての表現について、前後の文章によっては最上級表現に該当しない場合もあります。

最上級表現を使うための条件

最上級表現を使用する際は、その表現が正確かつ公正であることを保証するために、以下の二つの基準を満たす必要があります。

客観的な調査の存在

最上級表現をするためには「客観的な調査があること」が求められます。これは、独立した第三者機関によるリサーチや、一般に認められた方法で収集されたデータを意味します。例えば、製品が「日本一」や「ランキング1位」とされる場合、その根拠として特許権の取得やマーケティング会社の調査結果が必要です。また、学術文献や専門家の意見も有効な客観的根拠になり得ます。

調査結果の正確かつ適正な引用

客観的な調査結果を利用する際には、それが「正確かつ適正に引用」されていることが求められます。調査がいつ、どこで、何名に、どの機関によって行われたかを明確に示す必要があります。オンラインの場合は、関連する調査リンクの設置が推奨されます。この引用が不適切な場合、景品表示法に違反することとなり、企業の社会的信用を損ねることにつながる可能性があります。

これらの基準を遵守することにより、最上級表現を適切に使用することが可能になります。調査結果や資料は常に保管しておくことが重要であり、これによって万が一根拠を問われた場合にも迅速に対応できます。

しかしながら、客観的な根拠となる場合は多くないためうまく言い換えて表現することが望ましいです。

消費者庁が不当な「No.1」表示を次々に行政処分

2024年に入ってから消費者庁は景品表示法に基づいて「No.1」という表現に対する行政処分を積極的に行っています。これらの措置命令は、主に客観的な根拠を欠く「No.1」表示を摘発するものです。2024年3月21日には、消費者庁が「No.1」表示に関する実態調査を実施すると発表され、この分野でのさらなる取り組みが強化されることとなりました。この調査には、日本マーケティングリサーチ協会(JMRA)も情報共有と協力を求められています。さらに、非会員の調査会社の中には、問題が指摘された後に「No.1調査」事業から撤退を表明するところも現れました。具体的な措置命令の事例や詳細については、消費者庁のウェブサイトに掲載されている「景品表示法関連報道発表資料」で確認できます。

参照:消費者庁 景品表示法関連報道発表資料 2024年度より

「利用有無を問わないイメージ“No.1”」は不当表示

以下は各商品やサービスの広告において、利用の有無を問わずに「No.1」と表示することや、比較対象を恣意的に選ぶ行為(例えば、競合の強力な他社を除外するなど)も断罪の対象となっています。個別の事例には表現の微妙な差異が見られるものの、利用有無を問わないイメージ調査に基づく「No.1」表示が不当とされたことは、判例として確定しています。これは今後の行政指導や各団体の自主規制の指針となるでしょう。

23年 6月14日: ペットサプリ「7冠達成」
23年 8月 1日: オンライン家庭教師「利用者満足度No.1」ほか
24年 2月27日: 太陽光発電システム機器「3部門No.1」

消費者庁によるNo.1 表示に関する実態調査報告書の公表

第三者の主観的な評価を基にした「顧客満足度」や「コスパが良いと感じる」といったNo.1表示が増加していますが、その中には合理的な根拠が不十分なものも含まれています。こうした状況を受け、消費者庁がNo.1表示に関する実態調査を実施しました。

No.1表示が行われていた中でも「顧客満足度」や「品質満足度」など満足度に関する表示が最も多く見られ、「高評価%表示」では「医師の〇%が推奨」「おすすめしたい○○」など、専門家による推奨を示すフレーズが最多でした。

事業者に対するヒアリングも実施され、No.1表示を行う理由として「競合他社が同様の表示をしているため」という回答が多く見られました。また、表示を検討した経緯については、調査会社やコンサルティング会社からの勧誘や提案が主なきっかけであったとの声が多く寄せられました。

消費者庁は、No.1表示に関する景表法上の考え方を整理し、合理的な根拠がない場合や事実と異なる場合には措置命令の対象となるとしました。No.1表示を行うためには、以下4つの要件を満たす必要があります。

比較対象の商品・サービスが適切に選定されている

<NG例>
「○○サービス 満足度 No.1」等と表示する場合において、○○に属する同種商品等のうち市場における主要なものの一部又は全部を比較対象に含めずに、調査を行っている場合

調査対象者が適切に選定されている

<NG例>
「20 代顧客満足度 No.1」のように、表示内容から、実際の利用者のうち一定の範囲の者(この例では 20 代の顧客)に調査をしたかのように示す表示を行っている場合

調査が公正な方法で実施されている

<NG例>
自社に有利になるよう回答を誘導する場合(例えば、複数の商品等の中から「おすすめしたい」商品等を選択して回答させる場合に、自社の商品等を、選択肢の最上位に固定する等して、選択されやすくする場合を含む。)

表示内容が調査結果と適切に対応している

<NG例>
特別な分類でNo.1になっただけなのに、すべての集計でNo.1になったかのように表示している場合

参照:令和6年9月 26 日 消費者庁表示対策課 No.1 表示に関する実態調査報告書の公表より

Q&A この表現言える?言えない?

ここからは当社でもよくご質問いただく表現について解説いたします。

Q:日焼け止めで「日本の最高基準であるSPF50+、PA++++」という表現は可能でしょうか?

A:事実であれば可能です。日焼け止めに関する日本の最高基準は、SPFは50+、PAは++++まであります。これはその製品が日本の規定する最高の紫外線防御効果を持つことを示しているため使用することは一般的に可能です。

Q:「最高の顧客サービス」という表現は可能でしょうか?難しければ言い換え表現を教えてください。

A:最高のサービスの基準が不明確であり、どのようにしてその結論に達したのかの説明がない場合は表現できません。客観的な評価や比較データが必要ですが、根拠とするのは難しいので避けることが望ましいです。「お客様の満足を追求するサービス」「信頼できる顧客サービスを目指して」などに言い換えることをおすすめします。

まとめ

広告表現においては、法令遵守と同時に消費者に信頼感を与えることが重要です。事実に基づいた効果を正確に伝え、効果を最大限に引き出しましょう。

・「最高」「No.1」などの最上級表現を使う場合は「客観的な調査」「調査結果の正確かつ適正な表示」が必要。

・客観的な根拠となる場合は多くないため違う表現に言い換えることが望ましい。

・「富士山は日本一高い山です」など一般に認知されている事実は、根拠の提示なしに使用できる

・No.1表示を行うためには、4つの要件を満たす必要がある。

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最後までお読みいただきありがとうございます。

広告表現は表示の受け手である「一般消費者」にどう捉えられるかが争点となりますので、以前はOKだった表現が時代の流れと共にNGとなることもあります。また、見る人が変わればOKだと思われる表現もNGになる可能性も。誰が見ても正しく伝わる表現を意識し、常にアンテナをはって正しい知識を持つことや、プロの見解も交えながら訴求することで、お客様が安心してお買い物できる環境となり、企業も守ることになります。

皆で正しい広告表現を目指していきましょう!マクロジでは、以下団体認証を取得し制作物の全てを広告審査しております。

サービスについてお気軽にお問合せください。

 

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