テーマ:ROASとは?ROIとの違い・見てはいけない場面をEC担当者向けに解説!
EC運営や広告運用の現場では、「ROAS(ロアス)」という言葉をよく耳にします。「ROASが合っていない」「ROASを改善しましょう」と言われても、正しく理解できていないまま使っているケースも少なくありません。本記事では、EC運用のプロである先輩社員AさんとEC運用を学び始めた新人社員Bさんが基礎知識を一緒に学んでいく様子をお届けします。

ROAS(Return On Advertising Spend)とは?

新人社員Bさん:先輩、広告レポートで「ROASが悪いですね」って言われたんですけど、正直あまり理解できていなくて…。
先輩社員Aさん:それもよくある話ですね。ROASは「広告費に対して、どれくらい売上が出たか」を表し、広告の費用対効果を見るための代表的な指標です。
新人社員Bさん:なるほど。つまり、広告費より売上が大きければいいということですか?
先輩社員Aさん:基本的にはそうですが、それだけで判断すると危険なこともあります。そこがROASの難しいところですね。
ROASの計算式

新人社員Bさん:まずROASは、どのように計算するんですか?
先輩社員Aさん:計算式はとてもシンプルですよ。
ROAS(%)=(広告からの売上 ÷ 広告費)× 100
例えば、広告費が10万円で売上が30万円だった場合、ROASは300%になります。
新人社員Bさん:300%ということは、広告費の3倍売れているという意味ですね。
先輩社員Aさん:その通りです。広告費1円あたり3円の売上を生み出したことを意味します。
なぜROASは重要なのか?

新人社員Bさん:でも売上が出ているなら、それで良い気もします。
先輩社員Aさん:実はそうとも限りません。ROASは広告の効率を見るための指標なんです。例えば広告費10万円で売上12万円だと、ROASは120%ですが、利益はほとんど残らない可能性があります。
新人社員Bさん:確かに…原価や送料などもありますよね。
先輩社員Aさん:そうです。ROASは「売れているか」ではなく、「広告として成立しているか」を見るための数字なんです。
ROASの目安や平均

新人社員Bさん:正直ここが一番気になります。ROASってどれくらいなら良いんでしょうか?
先輩社員Aさん:絶対的な正解はありません。ただ、参考としてEC業界ではジャンルごとにある程度の目安があります。
| ジャンル | ROAS目安 | 理由 |
|---|---|---|
| アパレル・ファッション | 350〜500% | 競争が激しくCPAが上がりやすいため。リピーター獲得やCRM施策とあわせて見ることが重要です。 |
| コスメ・美容 | 300〜600% | 定期購入やリピート購入につながりやすく、LTVを加味して判断されることが多いです。 |
| 家具・家電(高単価) | 250〜400% | 1件あたりの売上金額が大きく、少ない成約でも広告費を回収しやすい傾向があります。 |
| 食品・飲料 | 300〜450% | 客単価や利益率が比較的低めのため、ROASだけでなく利益額や継続購入率も重要です。 |
| 健康食品・サプリ | 200〜400% | 初回獲得時はROASが低くても、定期購入や継続利用によるLTV回収を前提に判断されるケースがあります。 |
| 低単価EC(雑貨など) | 400〜600% | 商品単価が低く粗利も限られやすいため、広告費回収のために高めのROASが求められます。 |
先輩社員Aさん:ただし、これはあくまで参考値です。例えば原価率が50%の商品ならROAS300%でも利益が出ますが、原価率が70%の商品だと同じROASでも赤字になることがあります。
新人社員Bさん:なるほど、平均よりも自社の利益構造が大事なんですね。
先輩社員Aさん:その通りです。ROASは「平均と比べる指標」ではなく、「自社の利益構造から考える指標」なんです。ちなみにROASの評価は、ざっくりこんなイメージです。ECでは「ROAS3以上(300%)」が一つの基準になることが多いと言われています。
| ROAS | 評価 | 解説 |
|---|---|---|
| 100%未満 | 赤字 | 広告費を売上で回収できていない状態です。広告戦略やターゲット設定の見直しが必要になります。 |
| 200〜300% | 最低ライン | 広告費は回収できているものの、原価や配送費を考えると利益が出にくいケースもあります。 |
| 300〜500% | 一般的な目安 | 多くのECサイトで目標として設定される水準です。利益と広告投資のバランスが取りやすい状態です。 |
| 500〜600% | 優秀 | 広告効率が高く、広告投資を拡大することで売上をさらに伸ばせる可能性があります。 |
| 600%以上 | 非常に良い | 広告運用が非常にうまくいっている状態です。ただし、広告投資を増やすとROASは下がる傾向があるためバランスが重要です。 |
損益分岐ROAS

新人社員Bさん:ROASの目安はなんとなく分かりました。でも、自社にとっての適正なROASってどう判断すればいいんですか?
先輩社員Aさん:いい質問ですね。そこで重要になるのが「損益分岐ROAS」です。これは広告費をかけても赤字にならない最低ラインのROASのことです。
新人社員Bさん:どうやって計算するんですか?
先輩社員Aさん:実はとてもシンプルです。
損益分岐ROAS(%) = 1 ÷ 粗利率 × 100
例えば、粗利率によって必要なROASは次のように変わります。
| 粗利率 | 必要ROAS |
|---|---|
| 50% | 200% |
| 40% | 250% |
| 30% | 333% |
| 20% | 500% |
新人社員Bさん:なるほど。粗利率が低いほど、必要なROASは高くなるんですね。
先輩社員Aさん:その通りです。例えば粗利率30%の商品でROAS300%だと、広告費は回収できても利益はほとんど残らない可能性があります。
ROASとROIの違い

新人社員Bさん:ところでROIっていう言葉も見たことがあります。ROASと何が違うんですか?
先輩社員Aさん:いい質問ですね。簡単に言うと、ROASは「売上ベース」、ROI(Return On Investment)は「利益ベース」で考える指標です。
新人社員Bさん:売上と利益の違い…ということですか?
先輩社員Aさん:そうです。ROASは「広告費に対してどれだけ売上が出たか」を見る指標でしたね。一方、ROIは最終的にどれだけ利益が残ったかを見ます。
ROI(%)= 利益 ÷ 投資額 × 100
新人社員Bさん:同じ広告でも、結果が変わりそうですね。
先輩社員Aさん:その通りです。例えばこんなケースです。
広告費:10万円
売上:30万円
商品原価:18万円
この場合
ROAS:30万円 ÷ 10万円 × 100 = 300%
ROI:(30万円 − 18万円 − 10万円)÷ 10万円 × 100 = 20%
新人社員Bさん:ROASは良さそうなのに、利益はそこまで多くないですね。
先輩社員Aさん:そうなんです。広告の世界では「売上は伸びているのに利益が残らない」という状況がよく起きます。
新人社員Bさん:ECだと送料やクーポンもありますしね。
先輩社員Aさん:まさにそこです。ECでは
・広告の効率を見る → ROAS
・ビジネスとして儲かっているかを見る → ROI
この2つを分けて考えることが大切なんです。
新人社員Bさん:なるほど。ROASだけ見ていると危ないですね。
先輩社員Aさん:はい。売上と利益は別物という意識が重要です。
ROASを見てはいけない場面

新人社員Bさん:ROASを見てはいけない場面ってあるんですか?
先輩社員Aさん:あります。代表的なのはこの3つです。
新規顧客獲得
先輩社員Aさん:新規顧客は初回が赤字でも問題ないケースがあります。
新人社員Bさん:リピートなどで回収するパターンですね。
先輩社員Aさん:そうです。そういう場合はROASだけでは判断できません。
認知広告
先輩社員Aさん:ブランド広告や認知目的の広告は、直接売上に繋がらないことも多いです。
新人社員Bさん:それでROASだけ見ると、全部止めちゃいそうですね。
先輩社員Aさん:まさにそれがよくあるミスです。
短期判断
新人社員Bさん:広告の数字って日によって変わりますよね。
先輩社員Aさん:はい。曜日やセール、在庫状況などでROASは簡単に変わります。短期の数字だけで判断するのは危険です。
ROASでよくある勘違い
新人社員Bさん:ROASって便利そうですが、間違えやすいポイントも多そうですね。
先輩社員Aさん:よくある勘違いは次の3つです。
・ROASが高い広告が一番良いと思ってしまう
・ROASが悪いとすぐ広告を止めてしまう
・売上だけで判断してしまう
新人社員Bさん:確かにやってしまいそうです…。
先輩社員Aさん:ECでは利益構造を理解した上で判断することが大切です。
ECサイトでROASを改善するポイント

新人社員Bさん:ROASを改善したいときは、どこから見直せばいいんでしょうか?
先輩社員Aさん:ROASを改善する方法は、大きく分けると2つです。ひとつは「広告費を無駄なく使うこと」、もうひとつは「広告からの売上を伸ばすこと」です。
新人社員Bさん:売上を増やすか、コストを抑えるか、という考え方ですね。
ターゲティングの見直し
先輩社員Aさん:その通りです。まず広告費の面では、ターゲティングの見直しが重要です。届ける相手がずれていると、クリックはされても購入につながらず、ROASは悪化しやすくなります。検索広告ならキーワード、SNS広告なら配信対象、ディスプレイ広告ならセグメント設定など、媒体ごとに見直すべきポイントがあります。無駄な配信を減らすことで、ROASの改善につながります。
新人社員Bさん:広告の設定を見直すだけでも変わりそうですね。
クリエイティブ改善でCVR(購入率)を上げる
先輩社員Aさん:それに加えて、クリエイティブ改善も重要です。バナーや広告文、動画の見せ方によって、クリック率や購入率は大きく変わります。ECでは特に、「誰に」「何を」「どんな魅力で伝えるか」が成果に直結しやすいです。そして、広告だけでなくLPや商品ページの改善も欠かせません。広告で興味を持っても、商品ページで不安が残れば購入されません。ROASが悪いとき、原因は広告ではなく、遷移先のページにあることも多いんです。
新人社員Bさん:同じ商品でも、見せ方次第で結果が変わるということですね。たしかに、広告だけ良くしてもページが分かりづらければ意味がないですね。
先輩社員Aさん:はい。商品説明、レビュー、価格訴求、配送情報、購入ボタンまでの導線など、購入を後押しする情報が整っているかを見ることが大切です。CVRが上がれば、同じ広告費でもROASは改善しやすくなります。
新人社員Bさん:広告と商品ページはセットで考えるべきなんですね。
AOV(平均注文額)を上げる
先輩社員Aさん:まさにその通りです。さらに、AOV(平均注文額)を上げるのも有効です。たとえばセット販売、まとめ買い訴求、送料無料ラインの調整などで1回あたりの購入金額が上がれば、ROASも改善しやすくなります。
新人社員Bさん:売上を増やすという意味では、注文単価を上げるのも大事なんですね。
先輩社員Aさん:そうです。ECサイトでROASを改善するには、広告運用だけでなく、商品ページ、導線、価格設計、CRMまで含めて全体で考える必要があります。ROASは広告担当者だけの数字ではなく、EC全体の設計が反映される数字なんです。
新人社員Bさん:なるほど…。ROAS改善というと広告の話だけだと思っていましたが、EC全体を見直す視点が必要なんですね。
先輩社員Aさん:はい。だからこそ、ROASが悪いときは「広告が悪い」と決めつけず、どこに課題があるのかを分解して見ることが大切です。それが改善への近道になります。
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ROASと一緒に見るべき指標

先輩社員Aさん:このようにROASは必ず他の指標とセットで見ましょう。
・ROAS × CPA(顧客獲得単価)
→ 1件の獲得にいくらかかっているかを見る
・ROAS × CVR(購入率 / コンバージョン率)
→ 広告を見た人がどれくらい購入しているかを見る
・ROAS × AOV(平均注文単価)
→ 1回の購入でいくら使われているかを見る
・ROAS × LTV(顧客生涯価値)
→ 1人の顧客が長期的にいくら売上を生むかを見る
新人社員Bさん:つまり、広告効率だけじゃなくて、「どれくらいのコストで顧客を獲得して、その顧客がどれだけ価値を生むのか」まで見る必要があるんですね。
先輩社員Aさん:その通りです。ROASはあくまで判断材料の一つです。
Q&A よくある質問

ここからは当社でもよくご質問いただく表現について先輩社員Aさんが解説します。
Q. ROASが急に悪化した場合、まず何を確認すべきですか?
A.まずは、数字が変わった原因を切り分けることが大切です。特に次のポイントを確認してみましょう。広告だけでなく、LP・商品ページ・価格などEC全体の変化を見ることも重要です。
・流入キーワードやターゲティングが変わっていないか
・広告の設定や入札額が変更されていないか
・CVR(購入率)が下がっていないか
・在庫切れや価格変更が起きていないか
Q. ROASは広告ごとに分けて見るべきですか?
A.はい、分けて見ることをおすすめします。例えば同じ広告でも以下では役割が違います。
・検索広告
・SNS広告
・ディスプレイ広告
検索広告は購入に近いユーザーが多く、ROASが高くなりやすい傾向があります。一方、SNS広告は認知目的のことも多いため、ROASだけで判断すると正しい評価ができない場合があります。媒体や目的ごとに数字を見ることで、どの広告がどんな役割を果たしているのかが分かりやすくなります。
Q. ROASは高ければ高いほど良いのでしょうか?
A.必ずしもそうとは限りません。ROASが高すぎる場合、広告の配信量を絞りすぎている可能性があります。例えば少ない広告費で確実に売れるキーワードだけに出していると、ROASは高くなりますが、売上の伸びは止まってしまいます。ECでは効率と売上のバランスを見ることが大切です。
・ROASが高い=効率は良い
・売上が最大化できているとは限らない
まとめ

・ROASは「広告費に対して、どれだけ売上が出たか」を表す指標
・ROASは売上ベース、ROIは最終的な利益を見るための指標
・ROASが高くても、原価や広告費によっては利益が出ていない場合があるため、利益まで確認することが重要
・広告の判断は、獲得コストやリピートなども含めて考える
先輩社員Aさん:EC運用は、状況に合わせて考え、改善を積み重ねていく仕事です。数字や表現の意味を正しく理解し、自社に合った判断を続けることが、成果につながっていきます。
新人社員Bさん:ありがとうございました!EC運用についての理解が深まりました。
先輩社員Aさん:どういたしまして。何か不明点があればいつでも聞いてくださいね!
・・・
最後までお読みいただきありがとうございます。
ECの指標は、商材や集客方法によって見るべきポイントが変わります。そのため、数値を見ていても判断に迷うケースは少なくありません。当社では、EC運営の状況に合わせて、見るべきKPIの整理や改善優先度の設計をサポートしています。指標の見方や改善の進め方でお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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