「痩せる」「細くなる(スリム)」 は表現できる?ダイエットの言い換え表現を薬機法・景表法に基づき解説

こんにちは、マクロジの中島です。

日常生活でよく耳にする「痩せる」や「細くなる」という言葉は、実は薬機法や景表法といった法律によってその使用が厳しく規制されていることをご存じでしょうか。これらの表現を含む製品やサービスを市場に提供する事業者は、消費者の注目を集め競争力を高めるために差別化を図ります。しかし、ここで最も重要なのは、薬機法や景表法と呼ばれる法律の枠組み内で行動することです。特に体重管理や体形変化を目的とした製品やサービスを扱う場合、これらの法律の理解と遵守は不可欠です。

この記事では、「痩せる」と「細くなる」の表現がどのように薬機法や景表法と関わっているのか、その重要性と事業者が留意すべき具体的な注意点について詳しく解説していきます。

化粧品の広告で「痩せる」「細くなる(スリム)」は表現できない?

化粧品の広告に「痩せる」「細くなる(スリム)」といった表現を用いることは認められていません。これは、化粧品が主に「清潔に保つ」「美しくする」「魅力を高める」「健康を維持する」といった目的で使用されるものであり、人体への作用が穏やかなものに限定されているためです。ダイエット効果を示唆するような表現は、その性質を超えた誇張と見なされます。このような誇大広告は、薬機法の第66条により禁止されています。この規制は消費者を誤解から守り安全で正確な情報提供を促進するために設けられています。

第六十六条 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。

出典:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律

さらに、「医薬品等適正広告基準」でも、「痩身」「顔痩せ効果」などの「痩せる」という表現についての記述がありました。

E10 「痩身」、「顔痩せ効果」等の表現 類似の表現にスリミング、ファーミング、セルライトなどがある。これらは、身体の構造機能に影響を与えられるかのような表現となり化粧品等の定義の範囲を逸脱するので使わないこと。顔痩せ効果等の主旨の表現は化粧品等の効能効果の範囲を逸脱するので行わないこと。ただし、化粧品等でも、化粧によるメーキャップ効果等の物理的効果等の外観的変化を表現する場合は、事実でありメーキャップ効果等の物理的効果であることが明確に示されていれば表現できる。

[認められる表現]小顔にみえるメーキャップ効果
[認められない表現の具体例]「ぐっと引き締めて」、「小顔印象へ」

引用:医薬品等適正広告基準 第4の3(1)、3(2)

よって、化粧品の広告に「痩せる」「細くなる(スリム)」を使用することはできません。

化粧品での違反事例

「化粧品の効果だけで痩せた」と解釈できる表現は違法となります。

塗るだけで痩せる!
塗るだけで足が細くなった

化粧品では化粧品効能効果56の範囲であればうたえます。そのため単純に化粧品の効能効果56をこえないよう文脈で調整するのもテクニックです。「痩せる」「細くなる(スリム)」などは使えませんが、「肌がひきしまる」「肌にはりを与える」「肌にツヤを与える」「肌を滑らかにする」という表現は使用できます。

また、使用感の表示は事実に反しない限り認められているので、マッサージ用のジェルや発汗作用のある入浴剤の使用感を伝えることはできます。

参考:化粧品の効能の範囲の改正について (平成23年7月21日)(薬食発0721第1号)各都道府県知事あて厚生労働省医薬食品局長通知より

健康食品の広告で「痩せる」「細くなる(スリム)」は条件によっては表現できる

健康食品の広告では、以下の3つの法律が関係してきます。

・薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)
・景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)
・健康増進法

景品表示法では、合理的な根拠がない効果・性能の表示はできません。健康増進法でも、健康の保持増進の効果等について、事実と違う内容は書かないように規制しています。医薬品的な効能や効果を表示すれば、薬機法上の医薬品としての扱いを受けるので「痩せる」「細くなる(スリム)」という表現は使用できません。

具体的に根拠を示し、健康食品のみの効果ではなく、運動や食事制限も行った結果であることを明記すれば「痩せる」と表現することに問題はないでしょう。

健康食品での違反事例

合理的な根拠が無い違反例

以下のような健康食品のみの効果で痩せたと解釈できる表現は避けるべきです。

製品単体での効果を強調する表現
「○○を飲んだだけで痩せた」など

食生活を変えずに体重管理が可能であると示唆する内容
「これを飲めば1日3食しっかり食べても太らない」など

健康食品だけで効果があると暗示するフレーズ
「食事制限しなくてもどんどん痩せる」など

生活スタイルの変更なしに体重が減ると説明する表現
「今までとおりの生活・食事で、誰でも痩せられる」など

活動量の増加なしに効果が得られるとする文言
「運動は不要」と断言するなど

近頃、わざと見えにくいフォントサイズで注釈を入れるような広告も多く見受けられますが、誰が見ても正しく伝わる表現を意識することが、消費者が安心してお買い物できる環境となり、企業も守ることにもつながります。十分に注意しましょう。

医薬的な効能効果の違反例

脂肪の分解排泄に関する記述
「脂肪を分解」「脂肪燃焼効果」など

体内組織・細胞の活性化に関する記述
「ホルモンの分泌を抑える」「食欲を抑える」など

排泄、整腸作用に関する記述
「腸内環境を整える」など

体質改善に関する記述
「痩せやすい体になる」など

これらの記述は医薬的な効果になってしまうので、注意が必要です。他にも以下のようなケースは表現できません。

■特定部位を表す表現
・おなか、腕、腸など

■症状や病名の記載
・肥満の方に
・コレステロールが高めの方に

■用法用量の指定
・1回1粒でOK

■行政機関が認めたような表現
・厚生労働省が認めた
・〇〇研究所推薦 など

健康食品の言い換え表現

厚生労働省によると「単にカロリーの少ないものを摂取することによって総カロリー摂取量を減らし、その結果体重が減少する」という現象は、医薬品的な効能効果とはいえないとしています。例えば「1日1食を○○に置き換えるダイエット」という表現は、置き換えダイエットに関連する健康食品で一般的に使用され、このルールに基づいて認められています。ただし、製品に含まれる特定の成分が痩身効果を促進するといった表示や、科学的根拠のない効果をうたうことは許されません。

健康食品の広告では、製品が身体に与える具体的な作用について明示せずに、一般的な健康維持や美容への貢献といった観点からの利点を強調することが認められます。以下は、そのような広告で許容される表現の例です。

「健康維持のために」
「美容のために」
「飲みやすい味」
「必要な栄養素を補う」
「野菜○個分の栄養素」
「食生活が乱れがちな方に」

さらに、製品の使用感に関する肯定的な表現、例えば「飲みやすい」「おいしい」「香りが良い」といった記載も問題ないとされます。

Q&A これはOK表現?NG表現?

ここからは当社でもよくご質問いただく表現について解説いたします。

Q:マッサージ機器であれば「1ヶ月で痩せる」「細くなる(スリム)」という表現は可能でしょうか?

A:筋肉の運動のみを目的としているマッサージ機器の場合、薬機法には該当しませんが雑貨(ダイエット器具)を使っただけで痩せるという表現は医薬的に捉えられるため表現できません。「振動により血行をよくする」「振動により筋肉のこりをほぐす」という表現であれば可能です。

Q:「肥満の方に」「コレステロールが高めの方に」という表現は可能でしょうか?

A:症状や病名の記載をすると医薬品とみなされるため表現できません。「健康維持のために」「必要な栄養素を補う」など一般的な健康維持や美容への貢献を表現することは可能です。

Q:健康食品で「1日に3回」「食前食後に飲む」という用法用量の指定はできますか?

A:健康食品で服用する時間や間隔、用量などが明示されていると医薬品とみなされるため表現できません。「1日2~3粒が目安」など「目安」をつければ基本的に問題ありません。

まとめ

広告表現においては、法令遵守と同時に消費者に信頼感を与えることが重要です。事実に基づいた効果を正確に伝え、化粧品の効果を最大限に引き出しましょう。

・化粧品では「ダイエット」「細くなる(スリム)」という標ぼうは一切表現できない。

・健康食品では以下の場合であれば表現可能。
  事実に基づく合理的な根拠がある
  運動や食事制限も行った結果であることを明記する場合
  身体に対する具体的作用を表記せず、健康の維持に重要であることだけを示すこと

・美容機器では「健康維持のために」「運動をサポート」などのサポート表現や使用感の表現のみ表現可能。

参考リンク
https://bentenmarket.com/blogs/yakki_keihyo_diet
https://bentenmarket.com/blogs/yakki-diet-style/

・・・

最後までお読みいただきありがとうございます。

広告表現は表示の受け手である「一般消費者」にどう捉えられるかが争点となりますので、以前はOKだった表現が時代の流れと共にNGとなることもあります。また、見る人が変わればOKだと思われる表現もNGになる可能性も。誰が見ても正しく伝わる表現を意識し、常にアンテナをはって正しい知識を持つことや、プロの見解も交えながら訴求することで、お客様が安心してお買い物できる環境となり、企業も守ることになります。

皆で正しい広告表現を目指していきましょう!

マクロジでは、制作物の全てを広告審査しております。サービスについては以下からお問合せください。

関連リンク

今更聞けない!景品表示法・薬機法の基本とよくある間違い表現とは?

株式会社マクロジと広告表現チェックツール『コノハ』を運営する(株)アートワークスコンサルティング、広告チェック領域で業務提携