テーマ「歯磨き粉」の広告表現は?化粧品/医薬部外品での違反事例や言い換え表現を解説
毎日使う歯磨き粉、実は薬機法・景表法で厳しく規制されています。例えば「歯を白くする」や「虫歯を予防する」という表現は、これらの法律の範囲内で適切に使用する必要があります。消費者に安全で効果的な製品を提供するためには、法律に基づいた正しい広告表現が求められます。
この記事では、マーケティング分野で10年以上の経験を持つ広告運用のプロフェッショナル先輩社員Aさんと、薬機法や景表法は初心者の新人社員Bさんが基礎知識を一緒に学んでいく様子をお届けします。難しい法律もありますが、AさんとBさんの会話を通じて一緒に理解を深めていきましょう!
化粧品・医薬部外品での「歯磨き粉」表現
新人社員Bさん:最近歯磨き粉の広告を担当することになったんですが、広告表現について注意しなければならないことが多くて戸惑っています。特に「歯を白くする」とか「虫歯を予防する」という表現が問題になることがあると聞いたんですが、本当ですか?
先輩社員Aさん:そうですね。歯磨き粉の広告は、薬機法と景表法という法律に従わなければならないので注意が必要です。ちなみに、歯磨き粉は薬機法の分類では「化粧品」、「医薬部外品」、または「医薬品」に該当します。商品によってどれに該当するかが異なるんですよ。最近の歯磨き粉の主流は薬用歯磨き粉で、これは医薬部外品に該当します。
新人社員Bさん:なるほど、じゃあ具体的にはどういった表現に注意すればいいんですか?
化粧品での歯磨き粉表現
先輩社員Aさん:例えば、化粧品としての効能効果として認められる56個の範囲内にある「ムシ歯を防ぐ」とか「歯垢を除去する」といった表現にする必要があります。具体的な表現は以下のとおりです。米印(※)のついているものは歯磨き粉だけの効果ではなく、ブラッシングすることでの効果であると明記する必要があります。
(49)ムシ歯を防ぐ(※)
(50)歯を白くする(※)
(51)歯垢を除去する(※)
(52)口中を浄化する(歯みがき類)
(53)口臭を防ぐ(歯みがき類)
(54)歯のやにを取る(※)
(55)歯石の沈着を防ぐ(※)
※使用時にブラッシングする歯みがき類
参考:化粧品の効能の範囲の改正について (平成23年7月21日)(薬食発0721第1号)各都道府県知事あて厚生労働省医薬食品局長通知より
医薬部外品での歯磨き粉表現
先輩社員Aさん:一方、医薬部外品としての歯磨き粉表現では、「歯周炎(歯槽膿漏)の予防」「歯肉炎の予防」「歯石の沈着を防ぐ」といった効果を謳うことが可能ですが、その際には科学的な根拠が求められます。これも、消費者に誤解を与えないための重要なポイントですよ!医薬部外品の歯磨き粉でも、歯を白くするというホワイトニング効果を表現する際には、ブラッシング効果によるものであることを明確にする必要があります。
これらの法律は、製品の品質や効果、安全性を確保し、消費者を守るために制定されています。だから、広告表現する際には誤解を招かないよう注意しなければなりません。
歯を白くする
口中を浄化する
口中を爽快にする
歯周炎(歯槽膿漏)の予防
歯肉炎の予防
歯石の沈着を防ぐ
むし歯を防ぐ
むし歯の発生及び進行の予防
口臭の防止
タバコのやに除去
歯がしみるのを防ぐ
化粧品での違反事例
新人社員Bさん:化粧品としての歯磨き粉には、どんな違反事例があるんですか?
先輩社員Aさん:例えば「歯を白くする」という表現は、ブラッシング効果によることを明記しないとNGです。医薬部外品で認められている「歯周炎(歯槽膿漏)の予防」「歯肉炎の予防」も化粧品では謳えません。他にも以下のような表現には注意が必要です。
この歯磨き粉で虫歯を完全に予防
歯茎の出血を治療
歯周病を治す
この歯磨き粉で歯が真っ白に
口臭が完全になくなる
歯石を除去 ※歯垢であればOK(歯石とは、歯にへばりついた歯垢が石のように硬く固まったもの。)
新人社員Bさん:なるほど。56個の範囲内であっても、注意が必要なんですね。
化粧品での言い換えテクニック
新人社員Bさん:じゃあ、どうやって適切な表現に言い換えるんですか?
先輩社員Aさん:例えば「この歯磨き粉は、歯を優しくケアします」というように効果を直接的に言い切らない表現が良いです。また「さわやかな息を保ちます」などの感覚的な表現も使えます。
新人社員Bさん:なるほど、具体的な効果ではなく、感覚的な表現にするんですね。
先輩社員Aさん:そうですね。他にも以下のような表現が可能ですよ!
ブラッシングにより、歯の表面をきれいにし、白さを保ちます
毎日のオーラルケアに
歯をきれいに保ちます
口臭予防に役立ちます
毎日のブラッシングを快適に
医薬部外品での違反事例
新人社員Bさん:医薬部外品としての歯磨き粉には、どんな違反事例がありますか?
先輩社員Aさん:医薬部外品の場合、「この歯磨き粉で虫歯が完全に治る」や「歯周病を治す」といった表現はNGです。これらは過大な効果を示唆しており、薬機法に違反する可能性があります。
新人社員Bさん:完全に予防するとか、治すといった表現は避けるべきなんですね。
先輩社員Aさん:その通りです。具体的な治療効果を謳うことは、非常に厳しく制限されています。他にも以下のような表現はNGです。
一回の使用で歯が真っ白に
歯垢を100%除去
口臭が完全になくなる
歯石を除去 ※歯垢であればOK
医薬部外品での言い換えテクニック
新人社員Bさん:どうすれば医薬部外品として適切な表現になりますか?
先輩社員Aさん:「虫歯予防に役立つ」や「歯周病予防をサポート」といった、効果を緩やかに示す表現が望ましいです。また「歯の健康を維持する」というような、具体的でない表現を使うことも有効です。
歯茎の健康を保ちます
歯を健やかに保つ
口臭予防に効果的
毎日のブラッシングに最適
歯を優しくケアします
新人社員Bさん:緩やかな表現にすることで、違反を避けるんですね。
Q&A この表現言える?言えない?
ここからは当社でもよくご質問いただく表現について先輩社員Aさんが解説します。
Q. 歯磨き粉でホワイトニング効果は表現できますか?
A. 化粧品では「歯を白くする」などのホワイトニング効果を謳うことは原則として難しいです。ただし「歯を白くする」効果があくまでブラッシングによるものであることを明確にし、ブラッシングの補助的な効果として白さをサポートするということであれば表現できます。例えば「歯の表面の汚れを落とし、自然な白さをサポートします。」といった表現です。
医薬部外品では、一定のホワイトニング効果を謳うことが可能です。ただし、科学的な根拠や試験データに基づく必要があります。また、ブラッシング効果によることを明記しておくと安心です。
Q. 「口臭を完全に消す」という表現は可能でしょうか?
A. 化粧品でも医薬部外品でも「完全に消す」という表現は誇張になるのでNGです。「口臭予防に役立つ」などの緩やかな表現が適切です。
Q. 「歯茎の健康を保ちます」という表現は可能でしょうか?
A. はい、効果を誇張せず適切な範囲内での表現です。化粧品でも医薬部外品でも表現できます。
まとめ
・化粧品では「歯を白くする」などの効果を表現する場合、ブラッシング効果によることを明記する必要がある。
・医薬部外品ではホワイトニング効果の表現は可能。
・すべて科学的な根拠に基づいた表現が必要。
先輩社員Aさん:広告表現においては、法令遵守と同時に消費者に信頼感を与えることが重要です。事実に基づいた効果を正確に伝え、化粧品の効果を最大限に引き出しましょう。
新人社員Bさん:わかりました。正確で誇張のない表示を心掛けることが大切なんですね。
先輩社員Aさん:その通り。消費者に対して正直で透明性のある情報を提供することが、企業の信頼を築くためにも重要です。薬機法を遵守することで、長期的には企業のブランド価値を高めることができます!
新人社員Bさん:ありがとうございました!薬機法についての理解が深まりました。これからは広告や製品表示に一層注意を払っていきたいと思います。
先輩社員Aさん:どういたしまして。何か不明点があればいつでも聞いてくださいね!
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最後までお読みいただきありがとうございます。
広告表現は表示の受け手である「一般消費者」にどう捉えられるかが争点となりますので、以前はOKだった表現が時代の流れと共にNGとなることもあります。また、見る人が変わればOKだと思われる表現もNGになる可能性も。誰が見ても正しく伝わる表現を意識し、常にアンテナをはって正しい知識を持つことや、プロの見解も交えながら訴求することで、お客様が安心してお買い物できる環境となり、企業も守ることになります。
皆で正しい広告表現を目指していきましょう!
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