化粧品での体験談・口コミ広告が違反になるケースとは?薬機法・景表法に基づき徹底解説

テーマ:体験談の広告表現は?化粧品での違反事例や言い換え表現を解説

化粧品の広告で『この化粧水でシワがなくなった!』『敏感肌でも安心して使えた!』といった体験談を見かけることがあります。しかし、こうした口コミや個人の感想を広告に使用することは薬機法や景表法の規制対象となる可能性があります。使用者の感想だから問題ないと思いがちですが、企業が関与すると科学的根拠のない効能の保証とみなされることもあります。

この記事では、マーケティング分野で10年以上の経験を持つ広告運用のプロフェッショナル先輩社員Aさんと、薬機法や景表法は初心者の新人社員Bさんが基礎知識を一緒に学んでいく様子をお届けします。難しい法律もありますが、AさんとBさんの会話を通じて一緒に理解を深めていきましょう!

化粧品での体験談表現

新人社員Bさん:最近SNSで『このスキンケアを使ったら1週間でシミが消えました!』といった投稿を見ました。こうした体験談は消費者の共感を得やすいなと思ったのですが、広告に活用できませんか?

先輩社員Aさん:確かに体験談や口コミは購買意欲を高める効果がありますね。しかし、そのまま広告として使用すると薬機法や景表法に違反する可能性があるため注意が必要です。

新人社員Bさん:実際に使用した方の感想であれば問題ないように思いますが、なぜ規制されているのでしょうか?

先輩社員Aさん:それがポイントです。たとえ事実であっても、企業が広告として発信することで『誰にでも同じ効果がある』と誤解を与える恐れがあります。そのため、薬機法では体験談広告の使用が厳しく制限されています。

化粧品での違反事例

新人社員Bさん:薬機法は具体的にどのような規制をしているんですか?

先輩社員Aさん:厚生労働省が定めた『医薬品等適正広告基準』というガイドラインがあります。その中で次のように規定されています。

(5)効能効果等又は安全性を保証する表現の禁止
医薬品等の効能効果等又は安全性について、具体的効能効果等又は安全性を摘示して、それが確実である保証をするような表現をしてはならない。
出典:厚生労働省 医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について 平成29年9月29日 20ページ

先輩社員Aさん:つまり、化粧品の口コミ広告で効果や安全性の保証はできません

新人社員Bさん:個人の感想でも言えないんですか?

先輩社員Aさん:個人の感想であっても企業が広告として使用する場合は『効果や安全性の保証』と見なされる可能性があるため規制対象となります。具体的には以下のような表現はNGですよ!

・シミが消えました!
・敏感肌でも安心して使えます。
・この美容液を塗ったら、シミがどんどん薄くなりました!
・このクリームでニキビが治りました!
・最高の使い心地です。

新人社員Bさん:なるほど。効果や安全性の口コミは広告として使えないんですね。

先輩社員Aさん:他にも以下のように定められています。このルールがある理由は、体験談は科学的な証拠ではないため消費者に誤解を与える可能性があるからです。

(5)使用体験談等について
愛用者の感謝状、感謝の言葉等の例示及び私も使っています。等使用経験又は体験談的広告は、客観的裏付けとはなりえず、かえって消費者に対し効能効果等又は安全性について誤解を与えるおそれがあるため以下の場合を除き行ってはならない。なお、いずれの場合も過度な表現や保証的な表現とならないよう注意すること。

出典:厚生労働省 医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について 平成29年9月29日 21ページ

新人社員Bさん:たしかに『この化粧水を使ったらシワがなくなった!』と書かれていたら『自分にも同じ効果があるかも』と思ってしまいますね。

先輩社員Aさん:その通りです。実際には肌質や生活習慣によって個人差があるため、同じ結果が得られるとは限りません。しかし、企業が体験談を広告に使うとまるで誰にでも同じ効果があるかのような印象を与えてしまうため厳しく規制されているんです。体験談は一見信頼性があるように思えますが、消費者の購買行動に強く影響を与えるため薬機法や景表法では慎重な取り扱いが求められているのです。

打消し表示とは?広告における注意点

新人社員Bさん:なるほど。そういえば広告で『※個人の感想です』と書かれているのを見かけますが、これはどういう意味なんですか?

先輩社員Aさん:それは『打消し表示』と呼ばれるものです。例えば『この化粧水を使ったらシワが薄くなりました!』という体験談広告の後に『※個人の感想です』と注意書きを加えることで、あくまで個人の意見であり効果を保証するものではないと補足する表現ですね。

新人社員Bさん:それを書いておけば効果を謳っても問題ないんですか?

先輩社員Aさん:打消しをしても効果は言えません。体験談を表示する場合大体の人が効果を得られるという認識を抱いてしまうので、たとえ『※個人の感想です。効果を保証するものではありません』と明示していても、それだけでは十分に効果を打ち消すことにはならないと判断されるんです。

また、体験談の内容を強調して表示する一方、打消し表示に「個人の感想です。効果には個人差があります」、「個人の感想です。効果を保証するものではありません」等と明瞭に記載されていたとしても、このような打消し表示によって、体験談から受ける効果に関する認識が変容することがほとんどないため、体験談が一般消費者の商品選択に影響を与えることに変わりはないと考えられる。

出典:消費者庁 打消し表示に関する実態調査報告書 平成29年7月 83ページ

化粧品でのOK表現

新人社員Bさん:なるほど、、、そうなると化粧品の広告ではまったく体験談を使えないんでしょうか?

先輩社員Aさん:基本的には禁止されていますが、以下のような使用感や香りの感想であれば例外として許容されることがあります。

①目薬、外皮用剤及び化粧品等の広告で使用感を説明する場合
ただし、使用感のみを特に強調する広告は、消費者に当該製品の使用目的を誤らせるおそれがあるため行わないこと。
②タレントが単に製品の説明や呈示を行う場合

出典:厚生労働省 医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について 平成29年9月29日 21ページ

新人社員Bさん:具体的にはどういった表現が認められていますか?

先輩社員Aさん:以下のような表現が可能ですよ!

・肌にスーッとなじんで、ベタつかずに使いやすいです。(クリーム)
・しっとりとうるおいが続く感じがします。(化粧水)
・スッキリ洗い流せて、肌がやわらかく感じます。(洗顔料)
・泡立ちがよく、洗い上がりがすっきりします。(シャンプー)
・香りがさわやかで気分が上がります。

先輩社員Aさん:ただし、使用感を強調しすぎると消費者が化粧品の本来の目的を誤解する可能性があるため、具体的な訴求方法は表現の専門家に確認することをお勧めします。

ステルスマーケティング

新人社員Bさん:なるほど!使用感の表現に気をつければ、広告でも自然な伝え方ができるんですね。そういえば、最近はインフルエンサーを起用したPRも増えていますよね。実際に使ってもらった感想をそのまま口コミとして自社サイトに載せてもいいでしょうか?

先輩社員Aさん:ちょっと待ってください!そのPR投稿を使う場合は、必ず『広告であること』を明記しないといけませんよ。

新人社員Bさん:それはどういうことですか?

先輩社員Aさん:企業が第三者を装って自社商品を宣伝したり、インフルエンサーやタレントに報酬を支払いながらその事実を明示しないとステルスマーケティングに該当する可能性があるんです。

新人社員Bさん:なるほど!『PR』や『広告』と明記すれば消費者にとっても分かりやすくなりますね。

先輩社員Aさん:その通り!正しく表記することで、消費者の誤解を防ぎ適法な口コミができます。

関連リンク:【ステマ規制ガイド】マーケティング担当者とインフルエンサーが知るべきルールや違反事例を解説

Q&A この表現言える?言えない?

ここからは当社でもよくご質問いただく表現について先輩社員Aさんが解説します。

Q. クリームでしっとりするのにベタつかないという口コミをページに掲載することはできますか?

A. 問題なく掲載できます。しっとりするベタつかないといった感想は、使用感に関するものであるため問題ありません。

Q. フェイスミストで爽やかな香りでリラックスタイムにおすすめという口コミは掲載可能ですか?

A. 可能です。香りの特徴や使用感を伝えるものであるため問題ありません。ただしリラックスタイムにおすすめではなく、ストレスが和らぐ疲れが取れるなどの医薬品的な表現はNGです。

Q. スキンケア商品でこの化粧水を使ったらシミが消えました!という口コミは掲載可能ですか?

A. いいえ、不可です。シミが消えるという表現は、医薬品的な効能効果を示すため薬機法に抵触します。使用感や香りの感想にとどめる必要があります。

まとめ

・化粧品での体験談・口コミ広告は使用感や香りの感想であれば掲載可能。

個人の感想です。効果を保証するものではありません。』と明記しても、消費者が効果を期待してしまう表現はNG。

・インフルエンサーやモニターの口コミを掲載する場合は、企業から依頼されたPR投稿であることを明記する必要がある。

先輩社員Aさん:広告表現においては、法令遵守と同時に消費者に信頼感を与えることが重要です。事実に基づいた効果を正確に伝え、化粧品の効果を最大限に引き出しましょう。

新人社員Bさん:わかりました。正確で誇張のない表示を心掛けることが大切なんですね。

先輩社員Aさん:その通り。消費者に対して正直で透明性のある情報を提供することが、企業の信頼を築くためにも重要です。法律を遵守することで、長期的には企業のブランド価値を高めることができます!

新人社員Bさん:ありがとうございました!薬機法・景表法についての理解が深まりました。これからは広告や製品表示に一層注意を払っていきたいと思います。

先輩社員Aさん:どういたしまして。何か不明点があればいつでも聞いてくださいね!

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最後までお読みいただきありがとうございます。

広告表現は表示の受け手である「一般消費者」にどう捉えられるかが争点となりますので、以前はOKだった表現が時代の流れと共にNGとなることもあります。また、見る人が変わればOKだと思われる表現もNGになる可能性も。誰が見ても正しく伝わる表現を意識し、常にアンテナをはって正しい知識を持つことや、プロの見解も交えながら訴求することで、お客様が安心してお買い物できる環境となり、企業も守ることになります。

皆で正しい広告表現を目指していきましょう!

マクロジでは、制作物の全てを広告審査しております。サービスについては以下からお問合せください。

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