今更聞けない!景品表示法・薬機法の基本とよくある間違い表現とは?

こんにちは!今回はネットショップ運営の担当者として押さえておくべき、景品表示法と薬機法の基本知識や近年の傾向についてお話しします。

近年、インターネットの普及により、広告やネットショップの各ページで過度な表現や間違った情報を発信することを多く目にするようになりました。一例として、大手企業がおとり広告をしたことにより、課徴金命令が下されただけでなく、社会的な信用も失っております。

それらを受けて、広告やWebサイトなどに対して様々な表現の規制をかける法律が制定され、その規制内容は時代の流れに応じて日々変化し、罰則も厳しくなっています。近頃は「※東京デジタルCATS」という都の取り組みも強化されました。

今回は、自分の広告表現が違反にならないように知っておくべきことや商品やサービスが誤解されないために、景表法・薬機法について一緒に学んでいきましょう。

※「東京デジタルCATS」(CATS = Clean Advertising Team of Specialists)とは、インターネット上で表示されている虚偽・誇大等の不当な広告表示を適正化するため、従来の取組を更に強化していきます。 ・東京都が処分や指導を行うに当たって、外部の専門家から助言を得る制度を拡充していきます。 ・膨大なインターネット広告について、事業者自らが適正な表示を行っていくよう、事業者や都民に働きかけていきます。 (引用:https://www.shouhiseikatu.metro.tokyo.lg.jp/torihiki/hyoji/cats/

景表法・薬機法について

景表法とは

景表法とは、「景品表示法」の略で、正式名称は「不当景品類及び不当表示防止法」といい、消費者の誤認を招き、正当な商品選択を妨げる下記の項目を禁止しています。

不当表示の禁止

景品類の制限および禁止
簡単に言うと、効果効能を誇張して表現して、消費者の方が不利益を被らないよう守ること、不健全な競争のエスカレートを止めることを目的とした法律です。
消費者庁は景品表示法違反について消費者からの通報を受け付けており、違反事業者に対しては再発防止等を命じる措置命令や、課徴金の納付を命じる課徴金納付命令を出す権限を有しています。

不当表示とは

景品表示法でいう「表示」には、パッケージや看板、テレビやインターネットの広告、口頭での宣伝など、消費者に商品を知らせるすべての表示が含まれます。
景品表示法で禁止される不当表示は以下3つです。

優良誤認表示
有利誤認表示
その他の誤認されるおそれのある表示

優良誤認表示と有利誤認表現

景品表示法は「消費者を誤認させるような不当な広告や表示すること」を禁止しています。
その内容には、「優良誤認表示の禁止」「有利誤認表示の禁止」「その他誤認させるおそれがある表示の禁止」の3つがあります。

優良誤認表示(5条1号)

商品やサービスの品質や規格およびそれらを示す数値の不当表示や内容について、実際よりも著しく優良であると一般消費者に示す表示。

例:国産小麦混用率が70%の食パンを「国産小麦100%」と表示。
例:「日本で唯一この美肌成分を含んだ化粧水」と表示していたが、実際には競争業者も同じ成分を利用していた。
消費者庁が優良誤認表示の有無を確認する必要があると判断した場合、サービスや商品に関する表示についてその根拠となる資料の提出を求められる場合があります。
つまり、「商品・サービスの質や規格」に関わる部分に嘘の情報を書くとNGになります。
(参考:https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/representation_regulation/

有利誤認表現(5条2号)

商品やサービスの価格、またその取引条件についての不当表示。
取引条件について、実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示
例:「先着で1万人のみが初月無料で契約可能」を謳う表示をしていたが実際には500名しか初月無料になっていなかった。
例:「他社製品に対して効果が2倍長持ちする」と表現していたが実際の効能は他社製品と同程度だった。
有利誤認は実際にはそうでないにもかかわらず「これはお得な商品だ」と消費者に思わせることです。
(参考:https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/representation_regulation/

その他 誤認されるおそれのある表示

優良誤認表示と有利誤認表示以外にも、次の6つは誤認されるおそれがある表示とされています。
・無果汁の清涼飲料水等についての表示
・商品の原産国に関する不当な表示
・消費者信用の融資費用に関する不当な表示
・不動産のおとり広告に関する表示
・おとり広告に関する表示
・有料老人ホームに関する不当な表示

景品類の制限及び禁止とは

景品表示法では、商品やサービスに付ける景品類の限度額を規制しています。商品にノベルティーやクーポンなどのおまけをつけると消費者の購買意欲を掻き立てられますが、景表法では過大な景品類の提供を禁止しています。景品につられて粗悪な商品を買わされるのを防ぐためです。
景品表示法で規制される景品類は次の3種類です。

一般懸賞
共同懸賞
総付景品

一般懸賞

商品購入で引けるくじや、サービス申し込みでできるゲームなどの景品は、一般懸賞です。
取引の額に応じて、懸賞で出せる景品額の上限と、提供する景品全体の総額が決まっています。

共同懸賞

商店街の懸賞や、ショッピングモールの懸賞など、一定地域の相当多数の業者が共同でおこなう懸賞を共同懸賞と言います。
共同懸賞の場合、景品類の最高額は取引額によらず30万円までです。また、商店街などがおこなう場合は年3回まで、年間通算して70日までと開催期間の限度があります。

総付景品

懸賞ではなく、購入者や来店者全員に対して景品を配る場合は、総付景品にあたります。

金額の詳細は消費者庁のサイトをご確認ください。
(参考:https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/premium_regulation/

2024年10月1日から改正景表法 直罰規定の導入へ

罰則と自主的な是正を促す仕組みを併用して悪質広告を是正するため、2024年10月1日に景表法が改正されました。

直罰規定の導入

虚偽の広告や誤解を招く広告表示に対し、行政処分を経ずに100万円以下の罰金を科すことが可能になりました。

インフルエンサーなどの第三者も罰則対象へ

悪質な広告表示を広めるインフルエンサーや広告代理店も、広告主と「共同して犯罪を行っている」と判断される場合には共犯として処罰対象となります。

再犯への処分強化

過去10年以内に課徴金納付命令を受けた事業者が再犯した場合、課徴金額を通常の1.5倍に引き上げされます。(通常の課徴金額は、違反広告による売上高の3%)

自主的な是正を促す「確約手続」の導入

違反が疑われる事業者に通知し、広告を自主的に修正すれば罰則が回避できる新制度。これにより、意図せず誤認を招いた場合でも修正しやすくなります。

薬機法とは

正式名称を、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」といいます。この法律の目的は、医薬品や医薬部外品、化粧品、さらには医療機器の品質と有効性、それらの安全性を確保することにあります。
薬機法に違反した場合には、行政処分のひとつである業務停止処分を受けることや、行政処分にとどまらず、刑事罰が科されることもあるなど、重い罰則が規定されています。

薬機法第68条には、
何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。」と規定されています。
「何人も」とは販売業者や広告主だけではなく、インフルエンサーやアフィリエイターなど広告に関わるすべての人が該当者になります。

薬機法の対象ジャンル

薬機法の適用範囲は、
・医薬品
・医薬部外品
・化粧品
・医療機器
・再生医療等製品
のジャンルを扱う広告が対象になります。

健康食品・サプリメント、健康・美容器具などは、直接的な法律による制限は受けませんが、医療品のような効果を訴求する表現は禁じられています。

違反するとどうなるの?

景表法に違反すると?

消費者庁長官による措置または措置命令や、課徴金(売り上げに対して額が決まる)の納付が命じられます。さらに、消費者庁のホームページに企業名などが公表されるため、企業の信頼が失墜する可能性があります。

景表法の違反事例

楽天株式会社
楽天株式会社は、インターネットサイトである楽天市場で、商品につける価格について、不当な表示をしていました。具体的には、通常価格とセール価格の二重表示をしており、セール価格では通常価格の7割引などの大幅な割引になっていると見せかけていました。 実際にはもととなる通常価格自体が存在しないものだったので、特に有利になっていることはありませんでした。 このような不当な二重価格表示をしたことが、楽天株式会社による景品表示法違反行為です。このことによって、楽天は再発防止などの措置命令を受けました。

フィリップモリスジャパン
加熱式たばこ「アイコス」の期間限定のような割引宣伝が景表法違反にあたるとして5億5274万円の課徴金納付命令が出されました。 加熱式たばこ「アイコス」の販売で2年9カ月にわたって割引キャンペーンを続けていたのに期間限定のように宣伝したのは景品表示法違反(有利誤認)にあたるとして、東京都のフィリップモリスジャパンに対し、5億5274万円の課徴金納付を命じたと発表されました。

薬機法に違反すると?

刑事罰としての懲役刑や罰金刑はもちろん、行政罰として指導や命令が下ります。

薬機法の違反事例

大幸薬品
「空間のウイルスを除去」などと根拠のない表示で除菌剤「クレベリン」を販売したとして、消費者庁は製造販売元の大幸薬品(大阪府)に対し、景品表示法違反(優良誤認)で再発防止などを求める措置命令を出しました。
対象は二酸化塩素を利用した市販のクレベリンのスプレー型やペン状の携帯型など4商品。パッケージや自社サイトで「空間に浮遊するウイルス・菌を除去」とうたっていました。
エビデンスを求めたところ、密閉空間など生活環境とは異なる条件で実験したデータが提出され、
「二酸化塩素のような薬剤を空間に噴霧してウイルスを消毒、除菌する(効果の)評価方法は確立されていない」と判断され、再発防止などを求める措置命令が出されました。

ステラ漢方
2020年7月20日に、ステラ漢方が販売する健康食品「肝パワーEプラス」に関与する人が逮捕されました。
この日逮捕されたのは、ステラ漢方の社員のみならず、広告に携わった広告代理店の社員や再委託先の制作会社の社員も同容疑で逮捕されています。
広告主だけではなく広告代理店の社員も合わせて逮捕されました。
この事件で問題になったのは、記事広告に取り入れた「肝臓疾患の予防に効果がある」「無敵の肝臓を手に入れる」という表現です。
健康食品は、医薬品ではなくあくまでも健康食品にすぎません。そのため、病気に対して効果を発揮するなど医薬品的効果効能を表すことは罪に問われます。

よくある事例

今まで私たちが広告審査をしていた中でよくいただいた質問を載せているので、ぜひ参考にしてください。

Q.「美容成分」という表現に関しては、この表現を使うこと自体がNGでしょうか?注釈で補足を加えたら使用可能になるのでしょうか?

A.「美容成分」は化粧品等の適正広告ガイドラインでNGとされているワードです。
https://www.jcia.org/user/common/download/business/advertising/JCIA20200615_ADguide.pdf
効能効果を想起させる表現のため修正が望ましいです。また、「○○成分」についても効能効果を想起させるため使用は避けた方が望ましいです。

Q.雑化の商品なのですが、抗菌という言葉は載せても問題ないでしょうか?

A.薬機法に関係ない商品でも実際に抗菌や除菌効果がないのに除菌効果があると表現していれば、景品表示法違反になります。データが客観的な視点で根拠となり得るのか、その掲載方法は適切か、審査の専門家などに確認を取ってから掲載しましょう。

例えば、JIS Z 2801 の試験結果で抗菌効果が認められていても、それだけではその製品のウイルスに対する効果や消臭等の効果は分かりません。根拠(客観的なデータ)が無いにもかかわらず、その効果を標榜することは優良誤認となり、景品表示法に抵触する恐れがあります。根拠となり得るかどうかは審査の専門家に確認の上記載することをおすすめします。

Q.安心・安全という言葉ですが薬事法に関する商品以外(食品、寝具など)であれば訴求しても問題ないのでしょうか?

A.安心・安全のキーワードは根拠があれば記載可能です。根拠が無ければ記載できません。
例えば、
NG 鉄製だから割れにくいため安心。
OK 陶器素材に比べて鉄製だから割れにくいため安心。
→物理的に素材の違いで陶器よりも鉄製は割れにくいと一般消費者が理解できる表現のためOKとなります。

・・・

最後までお読みいただきありがとうございます。

広告表現は表示の受け手である「一般消費者」にどう捉えられるかが争点となりますので、以前はOKだった表現が時代の流れと共にNGとなることもあります。また、見る人が変わればOKだと思われる表現もNGになる可能性も。誰が見ても正しく伝わる表現を意識し、常にアンテナをはって正しい知識を持つことや、プロの見解も交えながら訴求することで、お客様が安心してお買い物できる環境となり、企業も守ることになります。

皆で正しい広告表現を目指していきましょう!マクロジでは、以下団体認証を取得し制作物の全てを広告審査しております。

サービスについてお気軽にお問合せください。

関連リンク

株式会社マクロジと広告表現チェックツール『コノハ』を運営する(株)アートワークスコンサルティング、広告チェック領域で業務提携