化粧品・医薬部外品で「肌荒れ」「ニキビ」は表現できる?言い換え含め薬機法・景表法に基づき徹底解説

テーマ:季節の変わり目に気になる『肌荒れ』『ニキビ』 は表現OK?言い換え含め薬機法・景表法に基づき徹底解説

季節の変わり目や花粉、黄砂、PM2.5が飛散する時期になると「肌が荒れやすい」「乾燥して敏感になる」と感じる人は多いのではないでしょうか。化粧品広告でも『肌荒れ』『ニキビ』に関する表現を多く見かけますが、薬機法や景品表示法のルールをご存じですか?季節の変わり目に気になる肌のゆらぎをテーマに、薬機法・景表法の基本と正しい表現方法を解説します。

この記事では、マーケティング分野で10年以上の経験を持つ広告運用のプロフェッショナル先輩社員Aさんと、薬機法や景表法は初心者の新人社員Bさんが基礎知識を一緒に学んでいく様子をお届けします。難しい法律もありますが、AさんとBさんの会話を通じて一緒に理解を深めていきましょう!

化粧品と医薬部外品の違い

新人社員Bさん:季節の変わり目になると肌が荒れたり、乾燥して敏感になると感じることがあります・・・そんなときにスキンケアを選ぶ際「肌荒れ」や「ニキビ」に対する訴求があると魅力に感じてつい手に取りたくなります。こういった表現って広告で使っても問題ないんでしょうか?

先輩社員Aさん:いい質問ですね。実は、化粧品や医薬部外品の広告では薬機法や景表法の観点から使える表現にルールがあるんです。まず、化粧品と医薬部外品の違いを説明しますね。化粧品は「人体に対する作用が緩和的なもの」に限られ、効能効果をうたえる範囲が限定されています。一方、医薬部外品は厚生労働省の認可を受けた有効成分が含まれていて一定の効果を認められたものです。

3 「化粧品この法律で「化粧品」とは、人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なものをいう。ただし、これらの使用目的のほかに、第一項第二号又は第三号に規定する用途に使用されることも併せて目的とされている物及び医薬部外品を除く。
この法律で「医薬部外品」とは、次に掲げる物であつて人体に対する作用が緩和なものをいう。
一 次のイからハまでに掲げる目的のために使用される物(これらの使用目的のほかに、併せて前項第二号又は第三号に規定する目的のために使用される物を除く。)であつて機械器具等でないもの
イ 吐きけその他の不快感又は口臭若しくは体臭の防止
ロ あせも、ただれ等の防止
ハ 脱毛の防止、育毛又は除毛
二 人又は動物の保健のためにするねずみ、はえ、蚊、のみその他これらに類する生物の防除の目的のために使用される物(この使用目的のほかに、併せて前項第二号又は第三号に規定する目的のために使用される物を除く。)であつて機械器具等でないもの
三 前項第二号又は第三号に規定する目的のために使用される物(前二号に掲げる物を除く。)のうち、厚生労働大臣が指定するもの

出典:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年八月十日)(法律第百四十五号)

化粧品での「肌荒れ」「ニキビ」表現

新人社員Bさん:なるほど。じゃあ、化粧品で「肌荒れ」や「ニキビ」に関する訴求をしたいときはどうしたらいいですか?

先輩社員Aさん:化粧品には薬機法で認められた56の効果があり、その中には「肌荒れを防ぐ」や「(洗浄により)ニキビ、アセモを防ぐ(洗顔料)」といったものも含まれています。そのため「肌荒れを防ぐ」や「ニキビを防ぐ洗顔料」といった表現は可能ですが「肌荒れを治す」「ニキビを改善する」などの医薬品的な表現は使えません。広告では、肌を清潔に保つことによるサポート効果を適切に伝えることが大切ですね。

参考:化粧品の効能の範囲の改正について(平成23年7月21日)(薬食発0721第1号)各都道府県知事あて厚生労働省医薬食品局長通知より

化粧品での違反事例

新人社員Bさん:具体的には化粧品の広告で「肌荒れ」や「ニキビ」に関して、どんな表現が違反になるんでしょうか?

先輩社員Aさん:化粧品は、あくまで「予防」や「保湿」といった範囲内での訴求が求められるので「治す」「改善する」といった医薬品的な表現をすると違反になります。例えば、以下のような表現はNGです。

「この化粧水で肌荒れを治します!」(治療を想起させるためNG)
「ニキビの原因に直接アプローチし、改善!」(医薬品の効果を示唆するためNG)
「炎症を抑えてニキビの赤みを消す」(抗炎症作用の表現は医薬部外品の範囲でのみ使用可)
「アクネ菌を殺菌してニキビを撃退!」(殺菌・治療の表現は医薬品の範囲)

新人社員Bさん:こういう表現、よく見かける気がしますが実は違反なんですね。

先輩社員Aさん:そうですね。消費者に誤解を与える表現は薬機法や景表法違反にあたる可能性があるので、慎重に言葉を選ぶ必要があります。ただし、化粧品の範囲内でも適切な言い換えを工夫することで「肌荒れ」や「ニキビ」に悩む人に対して効果的に訴求することは可能です。

化粧品での言い換えテクニック

新人社員Bさん:化粧品の広告では「治す」「改善する」といった表現がNGなのはわかりましたが、肌荒れやニキビに悩む人に向けて、どのように訴求すれば魅力が伝わるんでしょうか?

先輩社員Aさん:化粧品では、肌への直接的な治療効果を示唆するのではなく、スキンケアによるサポート効果を伝えることが大切です。例えば以下のような表現があります。

「肌をすこやかに保つ」
「肌をうるおし、キメを整える」
「肌をやさしく包み込む使用感」
「皮脂や汚れを落とし、肌荒れニキビを防ぐ(洗顔料)」
「毛穴の汚れをすっきり洗い流す」
「肌を清潔に保ち、すこやかに整える」

新人社員Bさん:なるほど! 直接的な効果をうたうのではなく、スキンケアによるサポート効果を伝えることが大切なんですね。

先輩社員Aさん:そうですね。「しっかり洗浄することで、肌荒れを防ぐ」「肌をやさしく包み込む使用感」といったように使用感や生活習慣に寄り添った表現にすると、より自然で伝わりやすくなりますよ。

新人社員Bさん:たしかに! ただ「ニキビを治す」と書くより、スキンケアによるサポートを伝えるほうが印象もやわらかくなりますね。

医薬部外品での「肌荒れ」「ニキビ」表現

新人社員Bさん:医薬部外品なら有効成分が含まれているので「肌荒れを治す」「ニキビを改善する」といった表現は使えますか?

先輩社員Aさん:医薬部外品は一定の効果が認められていますが「治す」「改善する」といった医薬品的な表現はできません。ただし「抗炎症成分配合で肌荒れを防ぐ」「ニキビを防ぐ有効成分○○配合」など有効成分の効果を伝えることは可能です。

医薬部外品での違反事例

新人社員Bさん:医薬部外品でも「治す」「改善」といった表現は、医薬品的な印象を与えるのでNGなんですね。他にも違反事例はありますか?

先輩社員Aさん:医薬部外品は「予防や衛生を目的とした商品」として一定の効果が認められていますが、あくまで症状を未然に防ぐものであり、治療効果を保証するものではありません。例えば以下のような表現はNGです。

「肌荒れを根本から改善!」(「改善」は医薬品的な表現)
「ニキビを完全に治します!」(「治す」は医薬品の範囲)
「炎症を鎮めて、すぐに赤みが消える!」(即効性や治療効果を強調するのはNG)
「どんな肌荒れでも一晩でキレイに!」(誇張表現は景表法違反の可能性)
「ニキビの根本原因をすべて解決!」(すべてを解決すると断定するのはNG)

医薬部外品での言い換えテクニック

新人社員Bさん:なるほど。医薬部外品だからといって、何でも自由に表現できるわけではなく、医薬品と区別しながら適切な言葉を選ぶことが大事なんですね。

先輩社員Aさん:その通りです!医薬部外品では有効成分の働きが認められているため、その範囲内であれば適切に効果を伝えることができます。ポイントは「治療効果を示唆せず、予防やサポートの効果をわかりやすく伝えること」です。例えば以下のような表現が可能です。

「肌荒れを防ぐ有効成分○○配合」
「抗炎症成分○○が肌トラブルを防ぐ」
「うるおいを与え、肌をすこやかに整える」
「バリア機能をサポートし、外部刺激から肌を守る」
「有効成分○○配合でニキビを防ぐ」
「皮脂を抑え、肌をすこやかに保つ」
「毛穴の汚れを落とし、肌を清潔に保つ」

新人社員Bさん:なるほど。医薬品的な表現を避けながら、有効成分の働きを適切に伝えることがポイントなんですね!

出典:医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について(薬生監麻発0929第5号)(平成29年9月29日)P10.11 厚生労働省医薬・生活衛生局 監視指導・麻薬対策課長

Q&A この表現言える?言えない?

ここからは当社でもよくご質問いただく表現について先輩社員Aさんが解説します。

Q. 「この化粧水で肌荒れを治す」と表現できますか?

A. 化粧品や医薬部外品は「治す」といった治療を想起させる表現ができません。医薬品と誤認される可能性があるため「肌荒れを防ぐ」「肌をすこやかに保つ」といった表現に言い換える必要があります。医薬部外品であれば「抗炎症成分配合で肌荒れを防ぐ」「ニキビを防ぐ有効成分○○配合」など有効成分の効果を伝えることは可能です。

Q. 「敏感肌でも安心」といった表現は問題ありませんか?

A. 化粧品や医薬部外品の表示では安全性を保証するような表現は禁止されています。「肌に優しい使用感」などの表現にするのが適切です。

Q. 「肌荒れがひどいときの必須アイテム!」という表現はできますか?

A. 「必須」や「マスト」といった断定的な表現は、誇張広告とみなされる可能性があるためNGです。「肌荒れを防ぐためのスキンケア習慣」や「肌をやさしく整えるアイテム」といった表現に置き換えましょう。

まとめ

・化粧品、医薬部外品では「肌荒れ」「ニキビ」に対する治療効果を直接的に表現することはできない

・医薬部外品では「抗炎症成分配合で肌荒れを防ぐ」「ニキビを防ぐ有効成分○○配合」など、有効成分の働きを適切に伝えることは可能

・化粧品や医薬部外品の表示において、安全性を保証する表現は使用できない

・「治す」「改善する」など、医薬品的な効果を想起させる表現はNG

先輩社員Aさん:広告表現においては、法令遵守と同時に消費者に信頼感を与えることが重要です。事実に基づいた効果を正確に伝え、化粧品の効果を最大限に引き出しましょう。

新人社員Bさん:わかりました。正確で誇張のない表示を心掛けることが大切なんですね。

先輩社員Aさん:その通り。消費者に対して正直で透明性のある情報を提供することが、企業の信頼を築くためにも重要です。法律を遵守することで、長期的には企業のブランド価値を高めることができます!

新人社員Bさん:ありがとうございました!薬機法・景表法についての理解が深まりました。これからは広告や製品表示に一層注意を払っていきたいと思います。

先輩社員Aさん:どういたしまして。何か不明点があればいつでも聞いてくださいね!

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最後までお読みいただきありがとうございます。

広告表現は表示の受け手である「一般消費者」にどう捉えられるかが争点となりますので、以前はOKだった表現が時代の流れと共にNGとなることもあります。また、見る人が変わればOKだと思われる表現もNGになる可能性も。誰が見ても正しく伝わる表現を意識し、常にアンテナをはって正しい知識を持つことや、プロの見解も交えながら訴求することで、お客様が安心してお買い物できる環境となり、企業も守ることになります。

皆で正しい広告表現を目指していきましょう!

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