
テーマ:汗・におい対策商品の広告はどこまで可能?夏に増える『口臭・体臭・加齢臭』表現を薬機法・景表法からチェック!
汗ばむ季節が近づくと「口臭」や「体臭」「加齢臭」などのニオイに関する悩みが増えてきますよね。特に初夏から夏にかけては、デオドラント商品やマウスウォッシュなどの広告でニオイ対策をうたう表現をよく見かけるようになります。しかし、それらの表現がすべて法的にOKというわけではありません。「ニオイを消す」「臭いの原因を断つ」などの表現には、薬機法や景品表示法に基づく厳格なルールがあります。
この記事では、マーケティング分野で10年以上の経験を持つ広告運用のプロフェッショナル先輩社員Aさんと、薬機法や景表法は初心者の新人社員Bさんが基礎知識を一緒に学んでいく様子をお届けします。難しい法律もありますが、AさんとBさんの会話を通じて一緒に理解を深めていきましょう!
化粧品と医薬部外品の違い
新人社員Bさん:夏が近づいてきて、汗やにおいが気になる季節ですよね。今ちょうど、「口臭」や「体臭」「加齢臭」対策の商品を担当していて、広告にどこまでそういう言葉を入れていいのか気になってて…。やはり表現の仕方に気をつけないといけないんですか?
先輩社員Aさん:いいところに気づきましたね!その感覚すごく大事です。実はそういった表現には薬機法や景表法が関わってくるんです。特に「化粧品」か「医薬部外品」かで使える言葉が違うんですよ。
新人社員Bさん:化粧品と医薬部外品ですか?名前は見かけますけど、広告的にどう違うのかはちゃんと知らないので、教えていただけますか?
先輩社員Aさん:広告を作るうえで押さえておきたい基本なので今のうちに覚えておきましょう!まず化粧品は、“清潔にする”や“香りをつける”など、“肌や身体を健やかに保つ”ことを目的にした作用が穏やかなものなんです。一方、医薬部外品は厚生労働省の認可を受けた有効成分が含まれていて一定の効果を認められたものです。
新人社員Bさん:なるほど、どの商品がどっちなのか意識せずに広告の言葉を考えていました。
先輩社員Aさん:表現のOKラインは商品が化粧品なのか医薬部外品なのかで変わってくるので、まずそこをしっかり確認することが大事ですよ!
この法律で「医薬部外品」とは、次に掲げる物であつて人体に対する作用が緩和なものをいう。
イ 吐きけその他の不快感又は口臭若しくは体臭の防止
ロ あせも、ただれ等の防止
ハ 脱毛の防止、育毛又は除毛
二 人又は動物の保健のためにするねずみ、はえ、蚊、のみその他これらに類する生物の防除の目的のために使用される物(この使用目的のほかに、併せて前項第二号又は第三号に規定する目的のために使用される物を除く。)であつて機械器具等でないもの
三 前項第二号又は第三号に規定する目的のために使用される物(前二号に掲げる物を除く。)のうち、厚生労働大臣が指定するもの
出典:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年八月十日)(法律第百四十五号)
化粧品での「口臭」「体臭」「加齢臭」表現
新人社員Bさん:例えば、化粧品のデオドラントの場合は「体臭、加齢臭をゼロに」のような表現はできるんですか?
先輩社員Aさん:いい質問ですね!それは薬機法上アウトになってしまう可能性があります。
新人社員Bさん:そうなんですね。臭いを消す商品なのに、臭いについて言うのはNGなんですか?
先輩社員Aさん:化粧品はあくまで「清潔に保つ」「香りを付ける」などの身体を健やかに保つことが目的なんです。例えば「体臭を抑える」「加齢臭を防ぐ」といった“原因に働きかける”表現は基本的にNGです。ただし、化粧品には表現可能な効果効能が56個認められており、その中に「口臭を防ぐ(歯みがき類)」というものがあります。あくまで歯みがき類での「口臭を防ぐ」までが認められた表現であり「口臭の原因菌にアプローチ」「口臭を治す」などはNGです。
参考:化粧品の効能の範囲の改正について(平成23年7月21日)(薬食発0721第1号)各都道府県知事あて厚生労働省医薬食品局長通知より
化粧品での違反事例
新人社員Bさん:なるほど…じゃあ「体臭予防」や「加齢臭をケア」って書いてたら違反になるんですね。
先輩社員Aさん:その通り!においの“原因そのものを除去・抑制”しているように見える表現や効果の長時間持続保証は言えません。具体的には以下のような表現です。
体臭を防ぐ
加齢臭を根本から消す
体臭ゼロを目指すデオドラント
どんな汗臭も完全カット!
1日中ずっとニオイなし
加齢臭の原因菌を殺菌
ニオイの原因に直接アプローチ
化粧品での言い換えテクニック
新人社員Bさん:じゃあ、逆にどう言い換えればセーフなんですか?
先輩社員Aさん:例えば「爽やかな香りで気になるにおいをカバー」「清潔感のある印象に」など、においに“直接効く”と断定しない、あくまで香りや使用感を軸にした表現ならOKです。他にも以下のように言い換えるといいですよ!
気になるにおいをやさしく香りで包み込みます
爽やかな香りで清潔感のある印象へ
香りのベールでリフレッシュ
すっきりとした香りで気分も軽やかに
汗をかく季節にも心地よい香り
ニオイが気になる季節にぴったりの香り
香りによるエチケットケアに
新人社員Bさん:臭いを「香りで包み込む」なら大丈夫なんですね。
先輩社員Aさん:その通りです。表現の目的がマスキング効果や印象を良くすることにとどまっていれば、化粧品としてセーフになりやすいですよ。
医薬部外品での「口臭」「体臭」「加齢臭」表現
新人社員Bさん:医薬部外品だったら「口臭予防」や「体臭を防ぐ」って書いてもいいんですか?
先輩社員Aさん:はい、医薬部外品で効果効能として承認されている範囲であれば「体臭・汗臭を防ぐ」「口臭を防ぐ」といった表現は可能です。
新人社員Bさん:おお、それなら売りやすそうですね!
先輩社員Aさん:ただし、注意点もあります。医薬部外品だからといって何を書いても良いわけではないんです。認められていない効能効果まで言ってしまうと違反になります。
新人社員Bさん:例えば、どんなのがダメなんですか?
医薬部外品での違反事例
先輩社員Aさん:化粧品と同様に、「加齢臭を根本から消す」や「どんなに強い体臭も24時間無臭に」といった表現は、たとえ医薬部外品であってもNGです。また、「臭いの元を分解する」といった表現は、承認された効能効果の範囲を逸脱しているため、薬機法違反にあたる可能性があります。さらに、「24時間」「長時間持続」など効果の持続時間を明示する表現は、医薬品の用法・用量を連想させると判断されることもあり、こちらも薬機法上注意が必要です。
新人社員Bさん:なるほど…医薬部外品だからどんなことでも表現できるわけではないんですね。
先輩社員Aさん:そういうことです。「持続力」「即効性」「根本的な解決」などの表現は、効果の誤認につながると判断されやすいので要注意です。他にも以下のような表現はNGですよ!
加齢臭を完全に消し去る
どんなに強い体臭も100%ブロック
使ったその日から無臭に
24時間ずっとニオイゼロをキープ
体臭の原因菌を除菌・殺菌
ニオイの根本原因に直接アプローチ
加齢臭に効く唯一の成分を配合
先輩社員Aさん:最近では、キャッチコピーでは直接言わずに画像や動画などのビジュアルで「においがゼロになった」「根本から消えた」と受け取られるような演出をしている広告も見かけます。こうした視覚的な表現であっても、消費者に誤解を与えるような内容は薬機法や景表法の違反と判断される可能性があります。ビジュアルだから大丈夫と油断せずに必要であれば広告表現の専門家などに相談することをおすすめします。
医薬部外品での言い換えテクニック
新人社員Bさん:じゃあ、医薬部外品ならどうやって表現すれば良いですか?
先輩社員Aさん:まず大前提として、その商品に“どの効能効果が認可されているか”を確認することが必要です。そのうえで、認可されている表現を正しく使い誇張しないように工夫します。例えば「有効成分が汗臭・体臭を防ぐ」「薬用成分配合で口臭を予防」などですね。あくまで“防ぐ”“予防する”という範囲内で、認可された内容に基づくならOKです。
体臭・汗臭を防ぐ
口臭を予防する
薬用成分配合で清潔感のある息へ
汗ばむ季節も安心の薬用デオドラント
薬用成分が口中を浄化し、口臭を防止
新人社員Bさん:加齢臭に関しては表現できないでしょうか?
先輩社員Aさん:医薬部外品の場合も「加齢臭をケアする」というと効果の範囲を超えることがあります。できれば「気になるにおいに対応」や「薬用成分でにおいを防ぐ」のように、加齢臭と断定しない方が安全です。
新人社員Bさん:わかりました!効果を強く言いすぎず、きちんと伝えるって難しいですね。
先輩社員Aさん:そこが広告運用の腕の見せどころですよ。表現を工夫すれば、ルールを守りながらも十分に商品価値は伝えられますよ!
出典:医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について(薬生監麻発0929第5号)(平成29年9月29日)P10.11 厚生労働省医薬・生活衛生局 監視指導・麻薬対策課長
Q&A この表現言える?言えない?
ここからは当社でもよくご質問いただく表現について先輩社員Aさんが解説します。
Q. 化粧品で「気になる体臭を根本から消す」という表現は可能ですか?
A. 「根本から消す」という表現は、原因に直接作用するような印象を与えるため、医薬品的効能を連想させるとして薬機法違反の可能性があります。「気になるにおいを香りで包み込む」など、マスキング効果にとどめる表現が望ましいです。
Q. 医薬部外品のデオドラントで「体臭・汗臭を防ぐ」という表現は可能ですか?
A. 可能です。「体臭・汗臭を防ぐ」は、医薬部外品の承認効能のひとつであり、適正に表示できます。
Q. 健康食品で「体の中からにおいケア」と書くのはOKですか?
A. 一見ぼやけた表現ですが「根本的においを抑える」効果があるかのように読めると、薬機法の観点で問題視されることがあります。「エチケットを意識した毎日の健康習慣に」などに言い換えましょう。
まとめ
・化粧品では「体臭」「加齢臭」を“防ぐ・抑える・消す”などの効能効果を直接的に表現することはできない
・化粧品で認められるのは「口臭を防ぐ(歯みがき類)」や香りによるマスキング効果のみ
・医薬部外品では「体臭・汗臭を防ぐ」「口臭を予防する」などの厚生労働省が認めた効能効果に基づく表現は可能
・「完全に消す」「根本から除去」「1日中ニオイなし」などの原因に働きかける表現や効果の持続はNG
先輩社員Aさん:広告表現においては、法令遵守と同時に消費者に信頼感を与えることが重要です。事実に基づいた効果を正確に伝え、化粧品の効果を最大限に引き出しましょう。
新人社員Bさん:わかりました。正確で誇張のない表示を心掛けることが大切なんですね。
先輩社員Aさん:その通り。消費者に対して正直で透明性のある情報を提供することが、企業の信頼を築くためにも重要です。法律を遵守することで、長期的には企業のブランド価値を高めることができます!
新人社員Bさん:ありがとうございました!薬機法・景表法についての理解が深まりました。これからは広告や製品表示に一層注意を払っていきたいと思います。
先輩社員Aさん:どういたしまして。何か不明点があればいつでも聞いてくださいね!
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最後までお読みいただきありがとうございます。
広告表現は表示の受け手である「一般消費者」にどう捉えられるかが争点となりますので、以前はOKだった表現が時代の流れと共にNGとなることもあります。また、見る人が変わればOKだと思われる表現もNGになる可能性も。誰が見ても正しく伝わる表現を意識し、常にアンテナをはって正しい知識を持つことや、プロの見解も交えながら訴求することで、お客様が安心してお買い物できる環境となり、企業も守ることになります。
皆で正しい広告表現を目指していきましょう!
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